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2007年9月 9日 (日)

上映作品:「晩秋」

2005年に日本で上映された「晩秋」。
タイトルの漠然とした感じでその当時は見のがしていたのですが、
見た人が誰しも「よかった」というのが「晩秋(Babi leto)」です。

「Babi leto」という原題は、いわゆる日本でい小春日和の秋模様をさすようですが、単語だけみると、「晩年の夏」とでも訳すべきいいまわしです。

登場人物は、人生晩年を生きる老夫婦が主人公。
おじいさんおばあさんの話はなかなかピンと来ないかもしれませんが
人生の最期をどう終えるかという話は、超高齢社会の日本でもそろそろ考えられていいのかもしれません。
関係ないしなー、興味ないしなーと思ったかもしれませんが、ここまで緻密にチェコを舞台に描かれた映画は見終わったあとに、安堵のような、満足感のような、不思議な気持ちでいっぱいになります。

おじいさんのほうは、年寄りだからってバカにされないように、といいながら、あたかも金持ちであるかのようにふるまって業者を手玉にとったりしている、年金暮らしのやんちゃな男性。
おばあさんのほうは、日々届く訃報の手紙やお墓のデザインを見て、「これはダサイわね」とかっこいい死に際をいまから計画していこうとする女性。
おじいさんの遊び呆けているさまに、おばあさんはいつも小言を言っているのですが。

その二人に、高齢者向け施設へと引っ越しをする話がふってわいてきます。

いつまでも年をとることを認めたくないおじいさん。
年をとったことを認めて、そのあとをどう生きるかを日頃から考えるしっかり者のおばあさん。

このおばあさん役は「コーリャ 愛のプラハ」で、主人公フランタの実母を演じた女優ステラ・ザーズボルコヴァーです。
すっかりおばあさんですが、しっかりとした口調やきっぱりとしたふるまいは、「コーリャ」に出てくるチェコ人の誇りや温かくも厳しいお母さんを思い出させてくれます。

息子役にはやはり「コーリャ 愛のプラハ」で墓掘りをしていた主人公の友達役、「ダーク・ブルー」でも主要な役どころの俳優オンドジェイ・ヴィエトヒーが出てきます。

そして、何より主人公のおじいさんは、この作品の公開後、惜しくも亡くなってしまいましたが、60年代のチェコスロヴァキア映画華やかなりしころの、シュヴァンクマイエル映画やヌーヴェル・ヴァーグ映画に多数出演経験のある役者ヴラストミル・ブロツキーです。
先日来日し、いま原宿で展示が行われているヤン・シュヴァンクマイエル監督の映画にもかつて出演していたという俳優です。
これだけでも、俳優ブロツキーの懐の深さや、ただの役者というだけではないところが感じとってもらえることでしょう。

チェコ映画を支えた俳優による、まさに生と死と友情と愛情とお金と。
商業化いちじるしいプラハを背景に、楽しく生きる、気高く生きるということを
年齢に関係なく呼び覚まされるストーリーになっています。

長く生きているということは、たくさんの経験や知識をもっているということでもあります。
「人は生きたままでも死ねるのよ」
映画のなかに出てくるなんとなしのセリフが、日本のなかに暮らす私たちにも、じんわりとしみこむ名作です。
お見逃しなく!

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